文:Rick Charette
編集:下山敬之
写真:Samil Kuo、台北市体育局、黒潮龍舟隊
端午節は、春節、中秋節と合わせて、中華文化における三大節句の一つです。今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で延期となってしまいましたが、ドラゴンボートというスポーツを通して、この伝統的な節句について学んだり、友達を作ったり、100年以上続く伝統的な風習を知ることができます。
台北には数多くのドラゴンボートのチームが存在していますが、今回紹介する黒潮龍舟隊は、台湾人と台湾に住んでいる外国人で結成された特別な混成チームです。現在は50名のメンバーのうち半数がアメリカ、フランス、ロシアなど欧米圏の出身者です。創設メンバーは元々一人で大会にエントリーして、ドラゴンボートの楽しさに目覚めました。そして、スポーツ愛好者たちが一年中ボートを楽しめるようにと、黒潮龍舟隊を結成。今回は、創立者の1人であるフランス出身のGael Lim(ガエル・リム)さんがインタビューに応じてくれました。
ドラゴンボートフェスティバルの起源
2000年の歴史を誇るドラゴンボートレースは、協調の精神を養い、相互成長できるスポーツと評価されてきました。近年ではさらに進んで、真剣勝負の世界へと変貌しています。ドラゴンボートのルーツは、洪水やその他の自然災害を防ぐために、水神である龍を崇拝した儀式と考えられています。他にも諸説あり、特殊なものでは病気や悪い事象を流すという意味で、神像をボートで海に流したことから発展したと言われています。
メジャーなものだと、中国の戦国時代の楚国の忠臣であった屈原(くつげん)の物語があります。国の行く末を憂いた屈原は入水自殺を図りますが、市民から慕われていたために、民衆が足の早い船で先を争って救出に向かいました。その際に海に潜む龍を追い払うために太鼓や銅鑼を鳴らし、屈原が食べられないように、米を入れた筒を川に投げ入れたと言われています。
時が経つにつれ、米を入れた筒がピラミッド形になり、もち米を使用した粽(ちまき)に姿を変え、利他的な奉仕の精神を持つ屈原を追悼する儀礼から、現在のドラゴンボートレースへと発展しました。
今年のように感染症による影響がない場合は、毎年台北市政府が「台北国際ドラゴンボートレース大会」を開催しています。この大会は規模も人気も最大級です。レース以外にも龍の目入れの儀式、水神に安全を祈願する祭礼、ドラゴンボート体験キャンプ、ボートトレーニングなどのプログラムが開催されます。
ドラゴンボートレース大会の舞台裏
リムさん曰く、ドラゴンボートはカヤックやカヌーとはまったく別物だそうです。「大きな違いはボートより定員が多いことです。漕ぎ手の人数は、レースのルールやボートのサイズによっても異なりますが、16人や18人が一般的です。レースの距離は500mで、トップチームのタイムは約2分ほど。ゴール地点にあるフラッグを手にしたチームの勝利となります」。
ドラゴンボートの素晴らしい所は、チームメンバーがそれぞれ重要な役割を担うことだとリムさんは言います。一部のメンバーが強いだけでは勝てず、それぞれが自分の役割を果たさなければいけません。「たとえば、舵取りはボートが効率的に前進するように操舵します。太鼓手は適切なペースで音を鳴らし、漕ぐリズムを一定に保ちます。先頭に立つ2名の漕ぎ手(リード)も、ペースを保つために太鼓手と呼吸を合わせなければいけません」。ゴール前でフラッグを取る役割は、特にプレッシャーが大きいとリムさんは話します。「フラッグを取り損ねたり、ボートから落ちる、フラッグを取らずにフィニッシュラインを越えると失格になる可能性があります」。
トレーニングの楽しさ潮の満ち引き
リムさんは2015年に、3人の友人と黒潮龍舟隊を結成。それ以前は、語学センターに通う留学生のチームに所属していました。「語学センターのボート活動は年に1回だけでしたが、友人と一緒にパドリングをしていくうちに、一年中このスポーツを楽しみたいと思い始めました。私たちは多彩なメンバーによる混成チームであり、学生も社会人も参加しています。プロのアスリートはいません。私たちは楽しみながら、トレーニングやアウトドア活動をしています」。
リムさんはチームの加入についてこう話します。「入団テストは通常、年2回行います。希望者は体力テストに合格し、フィットネスとパドリングのトレーニングに参加します。これで希望者もチームのことが分かり、向き不向きを判断できます。私たちは、身体的に健康で、強いチームワークの精神を持っている人を募集しています」。
さらにリムさんは続けます。「プロの場合は、専門的なトレーニングをしますが、一般のチームはただ楽しむことを目的として参加しています。私たちは週3回トレーニングを行います。日は平日の夜に体力増強メニューを行い、適切なパドリングに必要な筋肉を強化します。残りの2日は、平日の夜と日曜日の早朝で、パドリング技術の向上と長距離パドリングに必要な体力の向上、シンクロ方法の習得です」。
トレーニングで最も難しい要素を尋ねると、「パドリング技術、つまりストロークを学ぶのは容易ではありません。最も難しいのは16人または18人のメンバーが、『完全に同じタイミング』で漕ぐことです。パドルが水に入ってから出るタイミングが、同時である必要があります。これは強いチームになるための鍵であり、多く時間を必要とする部分です」と答えてくれました。
練習や早朝トレーニングによる睡眠不足、友人や家族との時間を犠牲にしたこと全てが忘れられない思い出です。そして、それは強い友情が生まれた瞬間に報われるとリムさんは言います。「0.1秒差でレースに勝ったことが最高の思い出です。他のチームと限界を超えて競い合いましたが、フィニッシュラインを超えた時点ではまだ勝敗が分かりませんでした。チームのために全てを捧げた感覚と、その瞬間に生まれた特別な感情は説明ができません。また、それが私たちの間に非常に特別な絆を生み出しました」。
黒潮龍舟隊の入団窓口
ドラゴンボートに興味のある方は、黒潮龍舟隊までご連絡ください。
blacktide2016@gmail.com (Lisa)
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